議会で政府のアラ捜しより能の無え議員が、大分鋭く監獄部屋の件で内務大臣に喰って掛ったそうな、責任塞げにでも、役人に調査材料を集めに派遣《よこ》すのだとサ。何《いず》れ議会の開期中だから、左様遠くもあるめエ、然しネ、オイ、斯様《こんな》一目瞭然の事実を山の鬼共はどう糊塗《ごまか》す積かナア、一寸思案が付かねエがナア」
「奴等は一筋縄でも十筋縄でも行かねエ悪党の寄集りだから、何《いず》れ直《すぐ》に御辞儀は仕まいが、俺などが来て随分|鼓吹《こすい》宣伝した為に第一此方等が今迄の人間見てエに黙らされちゃア居ねエ、思う存分役人の前でスッパ抜いてやるから、何と遣繰《やりくり》したって、どう辻褄が合うものかヨ、隣の飯場に居る玉の井の淫売殺しをやった木村ッてノッポが居るだろう、彼奴も誰が何と云おうと喋舌《しゃべ》り立ててやると言ってたサ、四、五人が先棒になって喋舌れば、後は皆元気付いて口が開《き》けるだろう、左様すりゃ蜂の巣を突ッついた様なもんだ、二百や三百の上飯台《うわはんだい》の悪党共がジタバタしたって何様なるもんか、生命を投出してりゃ何アニ!」
 被害者の希望、歓喜は、虐待者の憂慮である。人々
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