の荒仕事には不向だ。加之《そこへ》圧搾機械の様な方法で搾られるんでは、到底耐ったもので無い。朝、東の白むのが酷使《こきつかい》の幕明で、休息時間は碌になく、ヘトヘト[#「ヘトヘト」に傍点]になって一寸でも手を緩め様ものなら、午頭馬頭《ごずめず》の苛責の鉄棒が用捨《ようしゃ》なく見舞う。夕方ヤット辿り着く宿舎は、束縛の点では監獄と伯仲《おッつかつ》でも、秩序や清潔の点では到底《てんで》較べもので無い。監獄部屋の名称は、刑務所の方で願下げを頼み込むに相違ない。
搾り粕の人間の窶《やつ》れ死は、まだまだ幸福な方で、社会―裟婆―で云えば国葬格だ。未だ搾り切れずに幾分の生気を剰《あま》して居る人間は、苦し紛《まぎ》れに反抗もする、九死に一生を求めて逃亡も企る。而も其結果は恒常《いつも》、判で捺した様に、唯一の「死」。其死の形式は、斬殺、刺殺、銃殺は寧《むし》ろお情けの方で、時には鬱憤晴し、時には衆人《みんな》への見せしめに、圧殺、撲殺、一寸試しや焚殺も行われる。徒党を組んだ失敗者は時に一緒に十五、六人|鏖殺《おうさつ》されたこともある。
此世界では斯る男性的な、率直な方法が、何の障碍《こだわ
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