論陳述は属官が、一語も洩さず速記して居る。一方主任連の凹み方ッたら無い。
勢を得たので七、八人の者が続いて訴えたが、其《その》了《おわ》ったのは三時にもなっただろう。スルと参事官が立上って、大体要領は得た、更に何か変った、新しい方面の訴《うったえ》は無いかと尋ねた。
みんなが絶叫し、獅子吼《ししく》したあとではあり、別に新しい種もないので、誰も口をきく者もなかったのに、一人の十八、九の若僧が出しゃ張って、何う変り栄えもせぬ事を、クドクドと東北弁で述べた時……実に其時だった……。
壇上の席に突ッ立上った大河内参事官閣下が、破れ鐘の様な大声で呶鳴った。
「黙りやがれッ、七《しち》ッくどいッ」
若僧は一縮《ひとちぢみ》になる、一同呆気にとられてポカーンとした儘、咳払い一つ聞えぬ。
「黙らねえか、五月蠅《うるせ》エや、何ンだ、言う事ア夫れッ切りか、下ら無エ同じ事をツベコベツベコベ、ぬかしやがって耳が草臥《くたび》れらア、コウ手前《てめえ》達ア、此山に居ながら此山の讒訴《ざんそ》をしやがって夫れで済むか、山にもナ、楠孔明《くすのきこうめい》が控えてらア、一番|灰汁《あく》洗いを喰わせたん
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