だゾ。俺は参事官でも四時間でも無エ、高間の初蔵という者だ。手前達の内に良くねエ企らみを為る奴があるので、偽勅使で一杯引ッ掛けたタア真逆《まさか》に気も付くめエ、智慧の足り無エ癖に口|許《ばかり》達者にベラベラ喋りやがって、今に其舌の根ッ子オ引ン抜いてやるから待ってろヨ。今手前達の言立てはすっかり速記にとってあるから夫について言抜は又幾何でも考えられらア、馬鹿野郎共め」
 山本さんも立上って呶鳴った。
「獣《けだもの》め、口先|計《ばかり》達者で、腕力《ちから》も無けりゃ智慧もねエ、様《ざま》ア見やがれ、オイ、閻魔ッ、今|頬桁《ほおげた》叩きやがった餓鬼共ア、グズグズ言わさず――見せしめの為だ――早速片付ちまいねエ」

          (五)

 山田を始め七人の運命は、何の疑《うたがい》を挟む余地もなく、簡単に、礙滞《こだわり》なく、至極男性的に、明白に処断されたのは勿論である。
 一週間後、内務省参事官の一行が、道庁の警察部長を先導に乗込んだ時には、気抜した萎《いじ》けた被虐待者から、疑惑に満ちた冷眼で視られた丈で、一言の不平も、一片の希望も聴き取れずに引き上げた、而《そ》して本
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