にも吐《は》けなかった
とうとう肉をみせるようにはげしい霜をだした



葉は赤くなり
うつくしさに耐《た》えず落ちてしまった
地はつめたくなり
霜をだして死ぬまいとしている

日をゆびさしたい

うすら陽《び》の空をみれば
日のところがあかるんでいる
その日をゆびさしたくなる
心はむなしく日をゆびさしたくなる



窓をあけて雨をみていると
なんにも要《い》らないから
こうしておだやかなきもちでいたいとおもう

くろずんだ木

くろずんだ木をみあげると
むこうではわたしをみおろしている
おまえはまた懐手《ふところで》しているのかといってみおろしている

障子《しょうじ》

あかるい秋がやってきた
しずかな障子のそばへすりよって
おとなしい子供のように
じっとあたりのけはいをたのしんでいたい

桐《きり》の木

桐の木がすきか
わたしはすきだ
桐の木んとこへいこうか

ひかる人

私《わたし》をぬぐうてしまい
そこのとこへひかるような人をたたせたい



はっきりと
もう秋だなとおもうころは
色色なものが好きになってくる
あかるい日なぞ
大きな木のそばへ行っていたいきがする


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