んむしをみていたらば
そのせなかは青く
はかないきもちになってしまった



桃子
お父《とう》ちゃんはね
早く快《よ》くなってお前と遊びたいよ



雀《すずめ》をみていると
私《わたし》は雀になりたくなった

陽遊《かげろう》

さすがにもう春だ
気持も
とりとめの無いくらいゆるんできた
でも彼処《あそこ》にふるえながらたちのぼる
陽遊のような我慢しきれぬおもいもある



ほんとによく晴れた朝だ
桃子は窓をあけて首をだし
桃ちゃん いい子 いい子うよ
桃ちゃん いい子 いい子うよって歌っている



梅を見にきたらば
まだ少ししか咲いていず
こまかい枝がうすうす光っていた

冬の夜

おおひどい風
もう子供|等《ら》はねている
私《わたし》は吸入器を組み立ててくれる妻のほうをみながら
ほんとに早く快《よ》くなりたいと思った

病気

からだが悪いので
自分のまわりが
ぐるっと薄くなったようでたよりなく
桃子をそばへ呼んで話しをしていた

太陽

日をまともに見ているだけで
うれしいと思っているときがある



ながい間からだが悪るく
うつむいて歩いてきたら
夕陽《ゆうひ
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