んむしをみていたらば
そのせなかは青く
はかないきもちになってしまった
春
桃子
お父《とう》ちゃんはね
早く快《よ》くなってお前と遊びたいよ
春
雀《すずめ》をみていると
私《わたし》は雀になりたくなった
陽遊《かげろう》
さすがにもう春だ
気持も
とりとめの無いくらいゆるんできた
でも彼処《あそこ》にふるえながらたちのぼる
陽遊のような我慢しきれぬおもいもある
春
ほんとによく晴れた朝だ
桃子は窓をあけて首をだし
桃ちゃん いい子 いい子うよ
桃ちゃん いい子 いい子うよって歌っている
梅
梅を見にきたらば
まだ少ししか咲いていず
こまかい枝がうすうす光っていた
冬の夜
おおひどい風
もう子供|等《ら》はねている
私《わたし》は吸入器を組み立ててくれる妻のほうをみながら
ほんとに早く快《よ》くなりたいと思った
病気
からだが悪いので
自分のまわりが
ぐるっと薄くなったようでたよりなく
桃子をそばへ呼んで話しをしていた
太陽
日をまともに見ているだけで
うれしいと思っているときがある
石
ながい間からだが悪るく
うつむいて歩いてきたら
夕陽《ゆうひ
前へ
次へ
全13ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
八木 重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング