見えてほんとにうれしかった

冬の野

死ぬことばかり考えているせいだろうか
枯れた茅《かや》のかげに
赤いようなものを見たとおもった

病床無題

人を殺すような詩はないか

無題

息吹き返させる詩はないか

無題

ナーニ 死ぬものかと
児《こ》の髪の毛をなぜてやった

無題

赤いシドメのそばへ
にょろにょろと
青大将を考えてみな



眼《め》がさめたように
梅にも梅自身の気持がわかって来て
そう思っているうちに花が咲いたのだろう
そして
寒い朝|霜《しも》ができるように
梅|自《みず》からの気持がそのまま香《におい》にもなるのだろう



雨は土をうるおしてゆく
雨というもののそばにしゃがんで
雨のすることをみていたい

木枯《こがらし》

風はひゅうひゅう吹いて来て
どこかで静まってしまう

無題

雪がふっているとき
木の根元をみたら
面白《おもしろ》い小人《こびと》がふざけているような気がする

無題

神様 あなたに会いたくなった

無題

夢の中の自分の顔と言うものを始めて見た
発熱がいく日《にち》もつづいた夜
私《わたし》はキリストを念じてねむった
一つの顔
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