おもう

けしきが
あかるくなってきた
母をつれて
てくてくあるきたくなった
母はきっと
重吉よ重吉よといくどでもはなしかけるだろう

風が鳴る

とうもろこしに風が鳴る
死ねよと 鳴る
死ねよとなる
死んでゆこうとおもう

こどもが病《や》む

こどもが せき[#「せき」に傍点]をする
このせき[#「せき」に傍点]を癒《なお》そうとおもうだけになる
じぶんの顔が
巨《おお》きな顔になったような気がして
こどもの上に掩《おお》いかぶさろうとする

ひびいてゆこう

おおぞらを
びんびんと ひびいてゆこう

美しくすてる

菊の芽《め》をとり
きくの芽をすてる
うつくしくすてる

美しくみる

わたしの
かたわらにたち
わたしをみる
美しくみる

路《みち》

路をみれば
こころ おどる

かなかな

かなかなが 鳴く
こころは
むらがりおこり
やがて すべられて
ひたすらに 幼《おさな》く 澄む

山吹

山吹を おもえば
水のごとし

ある日

こころ
うつくしき日は
やぶれたるを
やぶれたりとなせど かなしからず
妻を よび
児《こ》をよびて
かたりたわむる

憎しみ

にくしみに
前へ 次へ
全13ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
八木 重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング