ばむ
おお、おろかしい 寂寥の手
おまへは、まあ
じぶんの手をさへ 喰つて しまふのかえ
くちばしの黄な 黒い鳥
くちばしの 黄いろい
まつ黒い 鳥であつたつけ
ねちねち うすら白い どぶのうへに
籠《かご》のなかで ぎやうつ! とないてゐたつけ、
なにかしら ほそいほそいものが
ピンと すすり哭《な》いてゐるような
そんな 真昼で あつたつけ
何故に 色があるのか
なぜに 色があるのだらうか
むかし、混沌は さぶし かつた
虚無は 飢えてきたのだ
ある日、虚無の胸のかげの 一抹《いちまつ》が
すうつと 蠱惑《アムブロウジアル》の 翡翠に ながれた
やがて、ねぐるしい ある夜の 盗汗《ねあせ》が
四月の雨にあらわれて 青《ブルウ》に ながれた
白 き 響
さく、と 食へば
さく、と くわるる この 林檎の 白き肉
なにゆえの このあわただしさぞ
そそくさとくひければ
わが 鼻先きに ぬれし汁《つゆ》
ああ、りんごの 白きにくにただよふ
まさびしく 白きひびき
丘 を よぢる
丘を よぢ 丘に たてば
こころ わづかに なぐさむに似る
さりながら
前へ
次へ
全21ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
八木 重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング