ゆえなり
かなしみ
このかなしみを
ひとつに 統《す》ぶる 力《ちから》はないか
美しい 夢
やぶれたこの 窓から
ゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよる
ひさしぶりに 美しい夢をみた
心 よ
ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい
「役立たぬもの」にあくがれて はてしなく
まぼろしを 追ふて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ
死 と 珠《たま》
死 と 珠 と
また おもふべき 今日が きた
ひびく たましい
ことさら
かつぜんとして 秋がゆふぐれをひろげるころ
たましいは 街を ひたはしりにはしりぬいて
西へ 西へと うちひびいてゆく
空を 指《さ》す 梢《こずゑ》
そらを 指す
木は かなし
そが ほそき
こずゑの 傷《いた》さ
赤ん坊が わらふ
赤んぼが わらふ
あかんぼが わらふ
わたしだつて わらふ
あかんぼが わらふ
花と咲け
鳴く 蟲よ、花 と 咲 け
地 に おつる
この 秋陽《あきび》、花 と 咲 け、
ああ さや
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