フ臣下のために、
※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ニュスよ、偶には打棄《うつちや》るがいい
   心|驕《(おご)》れる愛人達を。

   おゝ、牧人等の女王様!
 彼等に酒をお与へなされ
 正午《ひる》、海水を浴びるまで
彼等の力が平静に、持ちこたへられますやうに。
[#改ページ]

 ミシェルとクリスチイヌ


馬鹿な、太陽が軌道を外《はづ》れるなんて!
失せろ、洪水! 路々の影を見ろ。
柳の中や名誉の古庭の中だぞ、
雷雨が先づ大きい雨滴をぶつけるのは。

おゝ、百の仔羊よ、牧歌の中の金髪兵士達よ、
水路橋よ、痩衰へた灌木林よ、
失せろ! 平野も沙漠も牧野も地平線も
雷雨の真ツ赤な化粧《おめかし》だ!

黒犬よ、マントにくるまつた褐色の牧師よ、
目覚ましい稲妻の時を逃れよ。
ブロンドの畜群よ、影と硫黄が漂ふ時には、
ひそかな私室に引籠るがよい。

だがあゝ神様! 私の精神は翔《(と)》んでゆきます
赤く凍つた空を追うて、
レールと長いソローニュの上を
飛び駆ける空の雲の、その真下を。

見よ、千の狼、千の蛮民を
まんざらでもなささうに、
信仰風な雷雨の午後は
漂流民の見られるだらう古代欧羅巴に伴《(つ)》れてゆく!

さてその後刻《あと》には月明の晩! 曠野の限りを、
赤らむだ額を夜空の下に、戦士達
蒼ざめた馬を徐《(しづ)》かに進める!
小石はこの泰然たる隊の足下で音立てる。

――さて黄色い森を明るい谷間を、
碧い眼《め》の嫁を、赤い額の男を、それよゴールの国を、
さては可愛いい足の踰越《すぎこし》祭の白い仔羊を、
ミシェルとクリスチイヌを、キリストを、牧歌の極限を私は想ふ!
[#改ページ]

 渇の喜劇


     ※[#ローマ数字1、1−13−21]

   祖先《みおや》

私《わし》達はおまへの祖先《みおや》だ、
  祖先《みおや》だよ!
月や青物の
冷《ひや》こい汁にしとど濡れ。
私達《わしたち》の粗末なお酒は心を持つてゐましたぞ!
お日様に向つて嘘偽《うそいつはり》のないためには
人間何が必要か? 飲むこつてす。

小生。――野花の上にて息絶ゆること。

私《わし》達はおまへの祖先《みおや》だ、
  田園に棲む。
ごらん、柳のむかふを水は、
湿つたお城のぐるりをめぐつて
ずうつと流れてゐるでせう。
さ、酒倉へ行きますよ、
林檎酒《シイドル
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