スらす所為を云ふものぞ、おゝ穢らはしい狂人等、
折も折かの癩が、こんなやさしい肉体を啖《くら》はんとするその時に……
※[#ローマ数字8、1−13−28]
さて彼女に、ヒステリックな錯乱がまたも起つて来ますといふと
彼女は目《ま》のあたり見るのです、幸福な悲愁の思ひに浸りつつ、
恋人が真つ白い無数のマリアを夢みてゐるのを、
愛の一夜の明け方に、いとも悲痛な面持《おももち》で。
※[#始め二重括弧、1−2−54]御存じ? 妾《あたし》が貴方を亡くさせたのです。妾は貴方のお口を心を、
人の持つてるすべてのもの、えゝ、貴方のお持ちのすべてのものを
奪つたのでした。その妾は病気です、妾は寝かせて欲しいのです
夜《よ》の水で水飼はれるといふ、死者達の間に、私は寝かせて欲しいのです
※[#始め二重括弧、1−2−54]妾は稚《わか》かつたのです、キリスト様は妾の息吹をお汚しなすつた、
その時妾は憎悪《にくしみ》が、咽喉《のど》までこみあげましたのです!
貴方は妾の羊毛と、深い髪毛に接唇《くちづけ》ました、
妾はなさるがまゝになつてゐた……あゝ、行つて下さい、その方がよろしいのです、
男の方々《かたがた》は! 愛情こまやかな女といふものが
汚い恐怖《おそれ》を感《おぼ》える時は、どんなにはぢしめられ、
どんなにいためられるものであるかにお気付きならない
又貴方への熱中のすべてが不品行《あやまち》であることにお気付きならない!
※[#始め二重括弧、1−2−54]だつて妾の最初の聖体拝受は取行はれました。
妾は貴方の接唇《くちづけ》を、お受けすることは出来ません、
妾の心と、貴方がお抱きの妾のからだは
エス様の腐つた接唇でうよ/\してます!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
※[#ローマ数字9、1−13−29]
かくて敗れた魂と悲しみ悶える魂は
キリストよ、汝が呪詛の滔々と流れ流れるを感ずるのです、
――男等は、汝が不可侵の『憎悪』の上に停滞《とどま》つてゐた、
死の準備のためにとて、真正な情熱を逃れることにより、
キリストよ! 汝永遠の精力の掠奪者、
父なる神は二千年もの間、汝が蒼白さに捧げしめ給うたといふわけか
恥と頭痛で地に縛られて、
動顛したる、女等のいと悲しげな額をば。
[#改ページ]
酔ひどれ船
私は不感な河を下つて行つたのだ
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