は決して新年の贈物には使われないというのだ。
ところが相手もさるもの、ニコライ・イヴァーノヴィチは、まんまと冗談で言いまぎらしてしまったのさ。
「いやそれは」と奴さんは言うんだ、――「まず第一に、単なる迷信にすぎんですわい。もし誰か奇特な仁があって、ユスーポフ公の奥方がゴルグーブスからお買上げになった真珠の一粒を、このわしに贈物にしようと言われるなら、わしは即座に頂戴しますわ。このわしも、な奥さん、やっぱり昔は一通りそんな縁起をかつぎ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]したものでしてな、贈物には何が禁物かぐらいは、ちゃんと心得ておりますよ。娘さんがたに贈ってならんのは、あのトルコ玉ですて。というわけは、ペルシヤ人の考えで行くと、トルコ玉というものは恋患いで死んだ人間の骨だそうですからなあ。また、奥さんがたに贈ってならんのは、キューピッドの矢のはいった紫水晶ですて。もっともわしは、そんな紫水晶をためしに贈物にしたことがありますが、奥さんがたは受納されましてな……」
家内は思わずほほえんだ。相手はことばをつづけて、――
「そのうちあなたには、そんなのを一つ差上げるとしましょうて。
前へ
次へ
全41ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
レスコーフ ニコライ・セミョーノヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング