い何をしてるのか」と、二三人の声が合わさった。
機関士は仲間の肩二つを足場に伸びあがって、やおら鎧戸に眼をあてがったと思うととたんに頓狂な声をあげた。――
「おいおい、みんな! 首をしめてるぞ、おい、首をしめてるぞ!」
そう言いざま、もろ手で必死に鎧戸をたたきはじめた。十人ほどの同勢がそれにならって、窓にとびついて拳をふるいはじめた。
みるみるうちに群衆は数を増して、先刻われわれの見たようなイズマイロフ家の包囲が現出したのである。
「あっしが見たんです、この眼でしかと見とどけたんです」と機関士はフェージャの死体について証言するのだった、――「この子をベッドの上に組み伏せて、二人して首をしめていたんです。」
セルゲイはその晩ただちに拘束され、カテリーナ・リヴォーヴナは上の部屋へ押しこめられて、見張りが二人ついた。
イズマイロフの家は、とても堪らぬほど寒かった。ストーヴに火の気はないし、ドアも片時として閉まっているひまがなかった。物見だかい連中がぎっしり群れをなして、入れ替り立ち替り押しかけたのである。一同がやって来る目あては、お棺のなかに寝ていたフェージャと、もう一つ、幅のひろ
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