が、そのうちとうとう医者を迎えにやった。
 医者がしげしげと通って来て、いろいろと処方をしてくれ、その薬を時間どおりに、おばあさんが手ずから飲ませるのだったが、時にはカテリーナ・リヴォーヴナが頼まれることもあった。
「お手数ですがの」と、おばあさんが頼むのである、――「な、カテリーヌシカ。お前さんも追っつけお母さんですわの。その通り身重になって、神さんの思召しを待つばかりのお前さんに、こんな厄介をかけてはまことに済まんがの、まあ宜しくお頼《たの》もうしますよ。」
 カテリーナ・リヴォーヴナは、婆さんの頼みを、はいはいと聴いてやった。婆さんが、『いたつきの床に臥している童子フョードルの本復』を祈願に、晩祷に出かけたり、聖パンを頂きに早朝のミサに出かけたりするたびに、カテリーナ・リヴォーヴナは病床に附添って、のどが渇くといえば水を飲ませる、時間どおりに薬をあたえる、という甲斐甲斐しさだった。
 さてある晩のこと、婆さんは聖母宮入祭の前夜の夕拝と晩祷に出かけ、フェージュシカの看病をカテリーヌシカに頼んでいった。その頃はもう少年はだいぶ快方に向っていた。
 カテリーナ・リヴォーヴナがフェージャ
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