気持にして見りゃ、ねえカテリーナ・イリヴォーヴナ、あんたに正真正銘の奥様ぐらしをこそして貰いたいんで、これまでみたいなミミッチイ暮らしなんぞ、まっぴら御免でさあ」と、セルゲイ・フィリップィチは答えた。――「ところが賽の目はがらり外れて、今度こうして元手が減ったおかげで、あっしたちは今までにくらべてさえ、二段も三段もさがった暮らしをしなけりゃならないんでさあ。」
「けどね、セリョージャ、あたしはべつに、贅沢なんかしたくはないことよ。」
「なるほどそりゃあ、ねえカテリーナ・イリヴォーヴナ、あんたにして見りゃ、痛くも痒くもないことかも知れませんや。だがね、少なくともあっしの身にしてみりゃあ、あんたを大事に思えば思うだけ、また一つにゃ、焼いたり妬《ねた》んだりしている世間の野郎どもの目に、あっしたちの暮らしがどう映るだろうかと思うにつけ、なんとしてもこりゃ辛いことでさあ。あんたは勿論、平気の平左でいられるかも知れませんがね、あっしはどうも、万一そんな工合になったら、とても仕合わせな気持じゃいられそうもありませんや。」
といった調子で、追っかけ引っかけセルゲイは、カテリーナ・リヴォーヴナを焚き
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