て見せろと仰しゃるの? わたし、こうしてふうふう駈けずり※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]って、あんたの御機嫌をとっているのにさ。」
カテリーナ・リヴォーヴナは、サモヴァルを取りにまた部屋から駈けだしたついでに、またもやセルゲイのところへ駈けつけると、袖をぐいと引っぱって、こう言った、――『ぼやぼやおしでないよ、セリョージャ!』
セルゲイは、一たい何事がおっぱじまるのやら、さっぱり合点が行かなかったが、とにかく身構えだけはしたのである。
カテリーナ・リヴォーヴナが戻って来てみると、ジノーヴィー・ボリースィチは寝床の上に両膝をつきながら、枕もとの壁に南京玉《ビーズ》の紐のついた自分の銀時計を掛けているところだった。
「こりゃ一体どうしたわけだね、ええカテリーナ・リヴォーヴナ、一人で寝るのに二人分もふとんを敷いてさ?」と、さも怪訝《けげん》そうに、彼はだしぬけに細君にきいた。
「しょっちゅうお帰りを待ってたんですわ」と良人の顔を平然と見すえながら、カテリーナ・リヴォーヴナは答えた。
「これまた、厚くお礼を申しあげにゃならんわけだな。……ところでと、こんな物が羽根ぶとんの上に落
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