話がはじまる。
「一たいなんだって、とっつぁんの葬式を出すようなことになったんだね?」と、良人がたずねる。
「ただもう、ぽっくり亡くなったもんで」と細君、「とりあえずお葬いを出しましたの。」
「しかし、なんぼなんでも意外だったなあ!」
「神様の思召しですわ」とカテリーナ・リヴォーヴナは答えて、茶碗をかちゃかちゃいわせはじめた。
ジノーヴィー・ボリースィチは、沈みこんで部屋の中を行きつ戻りつしていた。
「ところでお前さんは、おれの留守のあいだ、どんなふうに暮らしていたかね、退屈じゃなかったかい?」と、またもジノーヴィー・ボリースィチが細君を根ほり葉ほりしはじめる。
「うちの楽しみといったら、世間にもおおよそ知れ渡っているはずですわ。舞踏会へ行くわけじゃなし、お芝居なんぞ尚更のことですわ。」
「それにどうやら、亭主の顔を見ても、大して嬉しくもなさそうだね」――じろりと横目をくれながら、ジノーヴィー・ボリースィチが切りこんだ。
「あら、おたがいもう、ほやほやの御夫婦じゃあるまいし、久しぶりで会ったからって、まさか無分別にのぼせあがりも出来なかろうじゃありませんか。この上、どんな風に嬉しがっ
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