いを計り、ねぼけ声をとりつくろって、カテリーナ・リヴォーヴナは応じた。
「おれだよ」と、ジノーヴィー・ボリースィチが答えた。
「まあ、あなたなの、ジノーヴィー・ボリースィチ?」
「うん、おれだ! なんだい、この声が聞えないみたいにさ!」
 カテリーナ・リヴォーヴナは寝ていたままのシュミーズ一つで飛びだして行くと、良人を部屋へ入れてやり、また元のぬくぬくした寝床へもぐりこんでしまった。
「夜明けがたは何だか冷えて来ますのねえ」と彼女は、毛布にくるまりながら言った。
 ジノーヴィー・ボリースィチは、じろじろ見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しながらはいってくると、安着の祈りをとなえ、蝋燭をともして、またあたりを見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]した。
「どうだい、元気かね?」と、彼女は細君に問いかけた。
「ええ」とカテリーナ・リヴォーヴナは答えると、上半身をおこして、前ボタンのない紗のブラウスを著はじめた。
「サモヴァルでも立てましょうか?」と、彼女はたずねた。
「まあいいさ、アクシーニヤを呼んで、立てさせたらいい。」
 カテリーナ・リヴォーヴナは、はだしに靴をつっかけ
前へ 次へ
全124ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
レスコーフ ニコライ・セミョーノヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング