墓場から出てきたのは、お前がセルゲイ・フィリップィチと二人がかりで亭主の寝床を暖めておる有様を、一目みておきたいからじゃよ。ごろごろごろ』とそこで猫は喉を鳴らして、――『ただ無念なことには、わしの眼は何ひとつ見えんのだ。わしを怖がらんでもいいわ、――それこの通り、お前の馳走のおかげで、わしは目玉までが抜けてしまったわい。な、わしの眼をよくごらん、怖がることはないわい!』
カテリーナ・リヴォーヴナは一目みるなり、ぎゃっとばかり悲鳴をあげた。自分とセルゲイのあいだには、またしても猫が寝そべっていて、しかもその猫の頭ときたら、遺骸になったボリース・チモフェーイチのと寸分たがわぬ大きさだった。おまけに両眼の代りに、一対の炎の輪がついていて、それが四方八方にぐるぐる※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]っているではないか!
セルゲイは目をさまして、カテリーナ・リヴォーヴナをなだめると、また眠ってしまった。しかし彼女は、睡気もなにも消しとんでしまい、――それが却って幸いになった。
目をあいたまま横になっていると、とつぜんその耳に、何者かが門を乗り越えて、中庭へはいって来たらしい音がきこえ
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