って言われたって淋しがらずにゃいられませんよ! これじゃたとい、よく世間の奥さんがたがなさるように、よしんばほかに誰かいい人があったにしたところで、一目逢うことだって出来やしませんものねえ。」
「え、なんだって?……そんなことじゃないわ。あたしの言うのはね、ただこれで赤《やや》さんが出来さえすりゃ、それだけでもう気が晴ればれするだろうと思うのさ。」
「ですけどね奥さん、こいだけは申し上げときますがね、赤ちゃんが出来るにしたって、ただのほほんとしてたって駄目なんで、やっぱし何か種がなくちゃ始まりません。ねえ奥さん、こうしてもう長の年つき旦那がたのとこで暮らして、商家のお内儀《ないぎ》というものの明け暮れがどんなものかということも、さんざん見あきるくらい見てきていながら、それでもやっぱしお互い何か胸に思いあたることはないもんでしょうかね? こんな唄がありましたっけ――『心の友がないままに、ふさぎの虫にとり憑かれ』ってね。ところで奥さん、このふさぎの虫っていう奴が、こう申しちゃなんですが、ねえカテリーナ・イリヴォーヴナ、じつはほかならぬこのあっしの胸にしたたかこたえましてね、いっそもうあっし
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