って言わあ。」
今しがたの事なんか、けろりと忘れたような顔だった。
「あれで中々の女たらしなんでございますよ、あのセリョーシカのやつ!」と、よちよちカテリーナ・リヴォーヴナの後ろからついて行きながら、おさんどんのアクシーニヤは説明するのだった。「あの騙児《かたり》め、上背《うわぜい》といい、お面《めん》といい、男っぷりといい、――ちょいと水際だっておりますからねえ。この女と見当をつけるが早いか、あの極道者、あっという間にもう蕩しこんで、ものにして、果ては身をあやまらせてしまうんですよ。おまけにもう、根が大の浮気もんでしてね、移り気も移り気、――昨日は東、今日は西って調子なんでございますよ!」
「でどうなの、アクシーニヤ……あの……」と、彼女の前に立って歩きながら、若いおかみさんが言った、――「お前さんの子は生きてるかい?」
「生きとりますよ、おかみさん、生きとりますよ――どうして中々! 憎まれっ子、世にはばかるって、この事でございますよ。」
「いったい誰の胤なのさ?」
「いえなに! つまりまあ、父《てて》なし児でございますよ――こうして大勢の男衆にまじっていますもんで――父なし児でご
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