げた。
「いんや、なかなかそうでねえ。今度はひとつ、組打ちと行きやしょう」とセルゲイは、渦まき髪をさっと後ろへさばきながら、真向からいどみかかった。
「いいともさ、さあかかっておいでな」と、つい面白くなったカテリーナ・リヴォーヴナは答えて、両の肘をもちあげた。
セルゲイは若いお内儀に組みつくと、相手のむっちりと盛りあがった胸を、じぶんの赤いルバーシカへ押しつけた。カテリーナ・リヴォーヴナは、わずかに両肩を一揺りゆすり上げようとしたばかりで、セルゲイにまんまと床《ゆか》から釣りあげられ、暫くはそのまま両手でぎゅっと抱きしめられたあげく、引っくり返しの枡の上にふわりとおろされた。
カテリーナ・リヴォーヴナは、得意の腕っぷしを使おうにも、そのひまが結局なかったのだ。赤いどころか、それこそまっ赤になった彼女は、そのまま枡に腰かけて、肩からずれ落ちた外套を引きつくろうと、そっと穀倉から出ていった。いっぽうセルゲイは、威勢のいい咳払いを一つして、こう呼ばわったのである。――
「やいみんな、この間抜野郎め! ぽかんとしてずに、さっさと粉を入れるんだ、うっかり量り込まずにな。塵もつもれば山となる、
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