目方がかかるもんかね? 目方のかかるのは、第一おいらの肉体《からだ》かよ? おいらのからだはな、なあ若えの、秤にかけりゃ一匁だって掛かることじゃねえ。腕っぷしだよ、目方がかかるなあ、俺らの腕っぷしだよ――からだなんぞじゃねえ!」
「そう言や、わたしも娘のころは、これでもとても腕っぷしが強かったものよ」と、またしても自分を制しきれなくなったカテリーナ・リヴォーヴナが言った。――「男にだってめったに負けなかったほどだわ。」
「へえ、そういうことなら一つ、お手をちょいと拝借と行きやしょうかね」と、美男の若い衆が言った。
カテリーナ・リヴォーヴナはちょっとたじろいだが、とどのつまり手を差しだした。
「だめよ、指環をとらなくちゃ、痛いじゃないの!」と、セルゲイが力まかせに彼女の手を握りしめたとき、カテリーナ・リヴォーヴナは悲鳴をあげて、あいている方の手で男の胸へお突きを喰らわせた。
若者はお内儀の手をはなすと、お突きを喰らったはずみで、たじたじと二あしほど横っ飛びにすっ飛んだ。
「そら見たことかい、それでやっとお前さんにも、女の底力がわかったというもんさ!」と、例の小百姓が頓狂な音《ね》をあ
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