セルゲイをみつめて、片時もその顔からそれなかった。
 最初の小休止のとき、彼女は落着きはらってセルゲイのそばへ寄っていって、『恥しらず』とささやいた拍子に、思いもかけずその顔へ真向から唾を吐きかけた。
 セルゲイは彼女に躍りかかろうとしたが、はたの者に引きとめられた。
「覚えてろ、この女《あま》め!」と彼は言って唾をふいた。
「だがどうも大したもんだぜ、あの女、おめえなんかにビクともしねえや」と、囚人たちがセルゲイをからかう中で、一きわ賑やかな笑い声を立てたのはソネートカだった。
 ソネートカが一役買って出たこのちょいとした一幕は、ぴったり彼女の好みに合ったのである。
「なんにしろこのままじゃ済まねえから、そう思ってろよ」と、セルゲイはカテリーナ・リヴォーヴナに捨てぜりふを言った。
 悪天候のもとの強行軍にへとへとになって、カテリーナ・リヴォーヴナは次の営舎の板どこの上で、傷ついた胸をいだきながら、その夜ふけ不安な夢路をたどっていた。したがって彼女は、女囚部屋へ二人の男がはいって来た気配に気がつかなかった。
 彼らがはいってくると、ソネートカが寝板から身をもたげて、無言のままカテリーナ
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