げて赦しを願い、髪を振りみだして死ぬところがわたしとても好きでしたから。しかもそのわたしの髪の毛というのが、ふしぎなくらい房々した亜麻色のでしてね、それをアルカージイは惚れ惚れするように見事に結いあげてくれたものでしたっけ。」
 伯爵は、この娘が思いもかけず大役を買って出たのを見てすこぶる満悦したが、その上に舞台監督までが「リューバなら大丈夫やります」と太鼓判をおすのを聞いて、こう答えた、――
「万一しくじったら、お前の背中へ鞭が飛ぶものと覚悟をせい。それはそうとこの娘には、わしの緑柱石の耳輪をとらせるがよい。」
 この『緑柱石の耳輪』というのは、彼女たちにとって嬉しくもあれば迷惑でもある拝領品であった。つまりそれが、ほんの束のま殿様の側妾《そばめ》の地位にのぼせられるという、格別の名誉を予言する最初のしるしだったからである。それを拝領するとまもなく、時にはすぐその日のうちにすら、その白羽の矢の立った娘を芝居のはねた後で「聖ツェツィリヤのごとき無垢な容子《ようす》に」仕立てよという命令が、アルカージイにくだるのが常だった。そして白無垢の衣裳に花冠をいただき、両手に百合の花を持たされて、
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