勝太郎
兼常清佐

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)四家《よつや》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)as[#「as」は縦中横]
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 私はニホン音楽をあまり好まない。それでラジオは演芸放送の時間になると必ず切っておくことにしている。それが何時だったか間違って掛けっぱなしになっていた事がある。偶然その時唄ったのが勝太郎である。この実に偶然な機会で私は勝太郎の名と、その綺麗な声とを聞いた。その翌日早速出来心を起して、私は勝太郎のレコードを二、三枚買って来たものである。
 何枚もない私の家のニホン音楽のレコードの事だから、私は一つその話をしてしまおうかと思う。実はもう一つ特種があるが、それはまた今度の事にして、まず手近な勝太郎レコードから始める事にする。
 と言ったところで私が何も別に勝太郎レコードを研究したわけでもなく、またこれに匹敵するレコードも外にいくらもあるだろうと思う。また不幸にして宣伝が下手なばかりに、これほど有名にならない唄い手もあるだろう。私が偶然勝太郎を撰んだのは、ただこんな一群の人々の代表のつもりである。
 
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