台ピアノではその重さで上から絃を押えるだけの仕掛になっている。しかもそのダンプァーの位置は絃の端の方である。しかし長いピアノの絃には相当な張力がかかっているし、絃の質量も相当ある。今その絃が或る程度のエネルギーをもって鳴り初めたとしたら、あんなダンプァー一つくらいでその振動が一瞬間にぱたりと止まるわけがない。その止まりきらないところを第二回目に叩いたとしたら、音は当然混雑するはずである。
もしダンプァーが絃の振動を一瞬間に止めたとしても、ピアノには響板というも一つの振動体がある。この響板はピアノの音には絶対的に必要なものである。しかしこれにはダンプァーも何もない。全く鳴らしほうだいの鳴りほうだいである。どんなパデレウスキーでも一タッチごとにピアノの下にもぐって、その響板の音を止める事は出来ない。或るエネルギーをもって響板が鳴り初めたら、それが全く静止するまでは次の音は叩かれないはずである。響板が鳴り止む前に次の音を叩けば、その音は必ず前の音と混雑するに決っている。
これは事実上その音を撮影して見ればわかる事である。
c'[#「c'」は縦中横] の音を二度つづけて叩いた時の第二回目の
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