しょうか。
 譜の話ですか。譜に書くのももちろん一つの保存の方法です。しかし譜というものは決して音楽の全体を書くものではありません。『七人様の唄』を譜に書くことは容易に出来ますが、その譜を見たところで誰もあのように『七人様の唄』を唄うことは出来ません。保存となれば、やはり声そのものをレコードなりフィルムに入れなくては本当の保存にはなりません。ニッポンには『七人様の唄』のようなものが今日でも少くも三、四千は残っているでしょう。この哀れな三、四千曲の急をニッポン国家は救ってくれないでしょうか。
 昔の老人は洋服を着て歩く人を見ると石を投げ付けたものだそうです。今の国粋主義の老人諸君も私のこの話を聞いたらやはり石を投げ付けるでしょうか。



底本:「音楽と生活 兼常清佐随筆集」岩波文庫、岩波書店
   1992(平成4)年9月16日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:小林繁雄
2007年12月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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