は淋しい思いであった。
その外喜劇ファンの僕には、モント・プルの家庭喜劇、チャップリンのあの髯やステッキ、ダブダブのズボン、そのまま真似をした、にせチャップリン、ビリー・ウェストや田園趣味のチャーレス・レイの正喜劇、漫画映画、とくに、フラッシャーのフェリックス(猫の主人公)の「インキ壺の中なら」なぞは、めずらしいので眼を丸くした。ロイド眼鏡のハロルド・ロイドの長篇喜劇等、喜劇ファンであった僕には語りつくせぬものがある。
この頃中学生の僕は、映画のフィルムの一齣のコレクション[#「コレクション」は底本では「コレクシンョ」]に夢中になり、お小使いはすべてプロマイドとフィルムになってしまった頃で、夢に見るまで恋いこがれた、パール・ホワイトには和英字典に首っきりで、ファン・レターを書き、三カ月ぶりで、親愛なる日本の友の小野佐世男よという大型の写真を送られた時には、まったくこおどりをして足の踏むところを知らず、たいへんな感激であった。
アー、あの頃の純情さよ!
中学二、三年の頃、英国のゴーモン会社であったと思うが、「プロテア」というシリーズものの美しい女賊物語り映画を見てから、プロテアに
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