」]や、昨年話題をなげた「サンセット大通り」のグロリア・スワソンも濃艶な姿を画面一面に振り散らしていたのである、アー、あの時のスワソンの美しさよ、あの頃は彼女も二十八の春の頃であったにちがいない。
 キーストン喜劇の前に、ハム、チビという妙な髯をはやした大男と小男のコンビの喜劇新馬鹿大将という英国の喜劇俳優もわすれがたい想い出である。
 総てこれらは二巻もの程度の短篇もので、お正月には、吉例としてニコニコ大会というこれらの喜劇プロが組まれ、その楽しみというものはまったく想像以上であった。なかにも子供心に、世の中でこんなに楽しませてくれる人があろうかと思うくらい驚異と素晴しさを感じたのは、今なお映画界に明星の如く輝く、「ライムライト」の偉大なるチャップリンであった。少年時代の僕にとっては大いなるかてであり、漫画家になる遠因をうえつけてくれたのはこの世界にたぐいなきチャルス・チャップリンであったのにちがいない。私はすごいまでのチャップリン党であったのである。キーストン時代からエッサネー会社、ミュチャル会社とチャップリンは短篇から長篇にと発展して行き、「夜通し転宅」なぞのドタバタ喜劇から「犬
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