ルンゲン物語」「ジーグフリート」「ファースト」等文芸作品にしたり、ウファーのスター、コンライト・ファイト、エミル・ヤンニングス等のファンであった。当時の映画で、「鉄路の白ばら」と云うまずしいレールわきの父と娘の物語りは、素晴しい感銘で二三度見た思い出がある。ドイツ映画「バリエテ」の色気あふれるリア・デ・プッティや、「メトロポリス」のブリギット・ヘルムなぞは僕の好みの女優であった。これにさかのぼり、「カリガリ博士[#「カリガリ博士」は底本では「ガリガリ博士」]」のような表現派の新しい映画や、「ひとで」なぞの前衛映画にも、なにかフィルムの構成の面白さや、「ドクトル・マブーセ」「吸血鬼」のような怪奇映画に興味をもつようになった。
「アナタハン」で京都で張り切っているジョセフ・フォン・スタンバーグの処女作、「救いをもとめる人」なぞも最早白髪に近視鏡をかける年老えるスタンバーグの近影を見て過ぎし日の感激が又新たになるのである。
 私が父につれられ亭劇に、セシル・B・デミルの[#「セシル・B・デミルの」はママ]「イントレランス」を見た時には、まったく、そのローマのセットの偉大なのには子供心に驚異を
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