すから、どんな暗いことがあってもそれを顔に出さずに女房が送ってくれるというのが非常によくなる。元気が出る。それをうちの女房はやるんで私は感謝している。
ボクは酒飲みなんで、遅く帰る。それで女房をだます法なんですがいろいろ手があるのです。このごろはいきなり女房をおどかしてしまう。帰ると玄関を入るなり、
「危なかった!」
女房はおころうとするんだが、
「どうかしたんですか」
と、思わずいうと、
「いま自動車にひかれそこなった」
しかしいくども使ったんで失敗に終った。結局ウソをつくということはいけないんで、女房と家庭の間にはウソがあっては悪い。私の経験上、女房というものは絶対にだまされないものだ。これはどこの家庭でも絶対なもので、もしか自分の妻を生涯だましおわせるという人があったらこれは大悪人、絶対に最悪の奴に違いないとボクは思うんです。
それからいたわりがカンジンです。[#「カンジンです。」は底本では「カンジンです 」]家庭が冷たい家には亭主がなかなか帰らない。滋味のある生活です。私は結婚するのに酒は飲んでもいいが、フグを食べることだけはやめてもらいたいという条件が入りました。一
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