ないよ」
私が東京へかえるのだというと、背のすらした銀色のイヴニングをピッチリ美しい姿体に張りきらした肉感的な女性が、
「こういう絵描きさん、知っている」
「知っているどころじゃない、飲み仲間だよ」
というと彼女は、すみませんがと手紙をたくされたのである。土地に不景気風が吹くと、思わぬところでメッセンジャーボーイなぞにさせられるものであるとつくづく考えさせられてしまったのである。
そういいますが、まだ夜の街は水兵で賑わい、まるで映画もどきのセーラーの喧嘩の華がところどころに演じられ、港サセボはなかなか華やかである。BARからキャバレーから夜の女の群へとさまよい歩いて見たのです。日本人専門のハーバーライトは、とてもこみ合って、港で儲けた旦那衆が美人を擁して踊りくるっていた。外人専門の米軍許可を得ている美妓のいる堀ハウスにもいって見たのである。愛らしい純大和撫子が蝶々さんのような和服を着かざったり、上海ドレスにきめの細かい雪の肌を包んで、若いアメリカ水兵さんのピンカートンぶりを愛していた。SASEBOKINもどこへやら、ここばかりは明るい光が窓に輝いている。なんとはなしに、かわいそ
前へ
次へ
全7ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小野 佐世男 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング