うしても転校しなければならなくなつてしまつた。
「長年の宿望だつた女子大、やつと三月しかたゝないのに、むざ/″\名古屋の学校なんかへ……」私は泣き泣き転校準備の勉強をやつた。
愛知県一を訪ねたのが八月の末だつたらう。転校届けを出して、一週間とたゝぬうちだつた。しかし、女子大の方からの書類が間に合はなかつたので、試験をうけさせてくれず、私は「女子大へかへれるか」と思つたが、官舎の木俣さんのお世話や何かで、S校へ入つてしまつた。
あの場合、危うく宿なしの憂き目をみるところだつたのだから、木俣さん、その他には充分感謝すべきであり、私もよく校風をのみ込んで、それに順応して行くべきであつたのだが、私は、ちつともうれしくなかつた。
もと/\好きで入つた女子大と、いや/\押し込められたS校では、比べものにならない。云ふこと、なすことのすべてが気に喰はず、癪の種だ。だからS校のよさなどわかる訳がない。私は、只、むやみやたらと女子大をこひしがつた。転校する者に共通の悪い癖は、在校中はさほどにも思はないのに、転校すると、前の学校はいやによくみえる。そして又、新しい学校のアラばかり目につく、それである
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