赤ちやん
平山千代子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)西生田《にしいくた》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)丁度|西生田《にしいくた》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)クタ/\
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 七月十四日、私は丁度|西生田《にしいくた》の勤労奉仕でクタ/\だつたが、とにかくお母様をお見舞することとした。
 病院へ行つて靴を預けようとしたら、意地悪な下足のお婆さんに、
「そんな汚い靴! そこへ置いときな!」と叱られた。四階へ行つて暫らく間ごつき、ヤツと見つけて戸を開けたら、手前の小さな寢台が、モソツと少し動いた。
「おや?」と第六感にピンと来たので戸もしめずにのぞきこんだ。中には赤い小さな人間がねてゐた。成程赤ん坊だ。
「生れたの? エツ! 男?」夢中になつて、しかし、半分男である様にと念じて伺つたのに「女よ」と、お母様はニヤ/\笑つておつしやつた。おや/\三分の一がつかりして、……さて改めてこの小さいけれど生物である
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