石
平山千代子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)たわし[#「たわし」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)わざ/\
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私の家に門から玄関まで、ずつと石が敷いてある。
私は、始めは土をふんで歩いた。その頃からこの石とはお馴染である。何度この石につまづいて、口惜しい思ひをしただらう。
「こんな邪魔な石! どけちやえばいゝのに……」と、けとばして見たことも何度かあつた。
この憎まれたり、けとばされたりした、沢山の石の中に、私の好きな石が二つある。一つは玄関近くにあつて、少し青味がかつた……丁度、青磁のやうな色をした、大きい石で、そのきれいな色、なめらかなつやが私の心を牽いた。
もう一つは丁度、門と玄関との中間に位し、割合に四角く、やはり青ツぽい色をしてゐる。
春はつゝじの花びらをうけ、夏は水引草の小さい花の赤さと調和して、尚更、美しく私の心をとらへた。
私にはこれらの石が、とてもきれいに見えたのである。毎朝の往復にもこの石だけは、わざ/\よけて通つた。この
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