石の青さを汚すのが惜しい様な気がして、ふむのにしのびなかつたのである。
夏になると、水まきの時などよくたわし[#「たわし」に傍点]、でこの石をみがいて、その青さに一種の驚きに近い喜びをおぼえた。ジヤンケンとびをする時も、この石だけはふむのが惜しくて、内しよでよけたものである。
少し大きくなつてからは、この石をとびこした。が、困る事には、玄関に近い石の隣りがやはり二番目に私の好きな石なのである。どつちもふみたくない。
早く二つとも、跳びこせる様に大きくなりたいと、何度か練習したものだが、今では二つ位はヘイチヤラで、跳ばうと思へば三つでもとべる様になつた。
かうして、かつては私に可愛いがられたこの石も、今ではちつとも他の石と変らなくなつてゐる。
底本:「みの 美しいものになら」四季社
1954(昭和29)年3月30日初版発行
1954(昭和29)年4月15日再版発行
入力:鈴木厚司
校正:林 幸雄
2008年2月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。
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