小説
平山千代子
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【テキスト中に現れる記号について】
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ずら/\
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私つて、まあ、一体どういふんだらう。
本がよみたいけど、何か本をかして下さらない? ツて言つたので、お母様が明治大正文学全集の森鴎外をかして下さつた。
文章がきれいだから、ワケなんか考へずに、大ザツパによんでごらんなさいとおつしやる。
仰せかしこみて棒ヨミにずら/\とやつてみた。だけどワケがわかんないのだから、一寸も面白うない。ア――小説ツて何てつまんないもんだろ。
そこで、ほかのワケのわかる様なのをよんだ。
ワケはわかつたが、今度は胸がわるくなつた。思はず四、五回つゞけてついた溜息と共に、追ひ出さうとしたが、まだあまりいゝ気持になれなかつた。
どうも性にあはないらしい。
私は小説なるものをあまり読んだことがない。たまによんでも、途中で例によつてフーツと吐き出してしまふ。どうして人はこんなのが面白いのかと思ふ。ナゼつて、つまんないじやないの。第一よんで気持がいゝのかしら。私なんかよんでも一寸も気持よくなんかならないどこ
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