とか、かんとかと極くおぼえ書程度の簡単なもので、何と云つていゝかわからぬ。困つた顔をしてゐたが、智《とも》ちやんは親切に、
 これを云へ、これを答へろと、つゝつきとほす。私は覚悟をきめて、しどろもどろいゝ加減なことを云つてしまつた。
 あの時はトモちやんの親切をすてきれず、あんないゝ加減なことを答へてしまつたが、今思ふとなぜ正直にやつて来ませんでした、と云はなかつたんだらうとほんとに残念だ。
 カイダイッてなあに? とこつそりきかずに、折角、正直に先生にきいたのに、なぜ大事なとこで、嘘をついて、胡魔化してしまつたか、今でもあの自分の卑劣さを考へると、がつかりしてしまふ。
[#地から2字上げ](昭和十六年の思ひ出)



底本:「みの 美しいものになら」四季社
   1954(昭和29)年3月30日初版発行
   1954(昭和29)年4月15日再版発行
入力:鈴木厚司
校正:林 幸雄
2008年2月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボラン
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