つた。その時※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の体が一個所膨んだ。そしてイワンの体が次第に腹の中へ這入り込んで行くのが見えた。己は叫ばうと思つた。その刹那に運命が今一度不遠慮に我々を愚弄した。※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]は吭《のど》をふくらませて、又曖気をした。想ふに、餌が少々大き過ぎたと見える。曖気と一しよに恐ろしい口を開くと突然曖気が人の形になつたとでも云ふ風に、イワンの首がちよいと出て又隠れた。極端に恐怖してゐる、イワンの顔が一秒時間我々に見えた。その刹那に※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の下顎の外へ食み出したイワンの鼻から、目金がブリツキの盤の底の、一寸ばかりの深さの水の中へ、ぽちやりと落ちた。なんだか絶望したイワンがわざ/\この世の一切の物を今一度見て暇乞をしたやうに思はれた。併しぐづ/\してゐる隙《ひま》はない。※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]はもう元気を快復したと見えて、又呑む運動をした。そしてイワンの頭は永久に見えなくなつた。
生きた人間の
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