ませんから、あの男の名前で願書を差出して、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の腹の中にゐる年月を勤務年月に加算してお貰ひ申す事は出来ますまいか。」
「ふん。さやう。休暇と見做《みな》して、給料は払はずにですな。」
「いいえ。給料も払つて貰ひたいのですが。」
「はてね。なんの理由で。」
「それはかうです。まあ、今ゐる所へ派遣せられたと見做しまして。」
「なんですと。どこへ派遣せられたと云ふのです。」
「無論※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の腹の中へ派遣せられたと見做すのです。謂《い》はば実地に付いて研究する為に派遣せられたと看做したいのです。無論それは例のない事でせうが、これも進歩的の事件で、それに人智開発の一端でせうから。」
 チモフエイは暫く思案した。「どうも官吏を※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の腹の中へ、特別な任務を帯びさせて派遣すると云ふのは、わたしの意見では無意義です。そんな予算はありませんからな。それにその任務がどうも。」
「さやうですね。学術上に実地検査をさせるとしては如何でせう
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