e《アインフェルレ》 ※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]とでも云うのだろう。しかし己は嘘《うそ》は言わないから、誰も落ち込みはしない。己は遣って来る人の性質や伎倆《ぎりょう》や境遇を見て、その人に出来そうな為事《しごと》を授けるのだ。それで成功したものが、これまでに随分あるよ。妻がいつも傍《そば》で聞いていてそういうのだ。あなたそんなにお金になるような事を沢山知っていらっしゃるなら、御自分で少しして御覧なすってはどうですと云うのだ。女なんというものは馬鹿なものだ。なんでも余所《よそ》でする事を好い事だと思っている。己には己の為事がある。己なんぞは会社の為事をして給料を貰っていりゃあ好いのだ。為事は一つありゃあ好いのだ。思付なんぞはいくらでもあるから、片っ端から人にくれて遣る。それを一つ掴《つか》まえて為事にする奴が成功するのだ。中には己の思付で己より沢山金をこしらえるものもある。金が何だ。金くらい詰まらないものが、世の中にありゃあしねえ。」
博士はそろそろ巻舌《まきじた》になって来た。博士は純粋の江戸子《えどっこ》で、何か話をして興に乗じて来ると、巻舌になって来る。これが
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