防火栓
DAS GROBE VERGNUGEN
ゲオルヒ・ヒルシユフエルド Georg Hirschfeld
森林太郎訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)定《ぢやう》興行

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)双方共|背後《うしろ》から

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
−−

 度度噂のあつた事が、いよ/\実行せられると聞いた時、市中の人民は次第に興奮して来た。これまで毎年ロオデンシヤイド市に来る曲馬師の組は、普通の天幕の中で興行したのだが、それはもう罷《や》められる。旅興行が定《ぢやう》興行になる。お寺のすぐ脇のマリアの辻には、鉄骨の大曲馬場が立つ。五千人入である。やれ/\安心だ。さうなれば、誰でも往かれる。そのうち番附が出た。どの番組が早く見たいと云はうか、どうも気が迷つてならない。水藝をする白熊十七匹も、アラビア沙漠の十匹の牝馬も火踊をするコブラ嬢も、音楽のわかる道化師トロツテルも、どれも/\見たい。
 一月一日の場所開きには、二興行ある。一つは午後三時に始まるので、今一つは午後七時
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