白い雲が散ってしまって、日盛りになったら、山をゆする声になるのであろう。
 この時|只《ただ》一人坂道を登って来て、七人の娘の背後に立っている娘がある。
 第八の娘である。
 背は七人の娘より高い。十四五になっているのであろう。
 黄金色の髪を黒いリボンで結んでいる。
 琥珀《こはく》のような顔から、サントオレアの花のような青い目が覗《のぞ》いている。永遠の驚を以《もっ》て自然を覗いている。
 唇だけがほのかに赤い。
 黒の縁《へり》を取った鼠色の洋服を着ている。
 東洋で生れた西洋人の子か。それとも相《あい》の子《こ》か。
 第八の娘は裳《も》のかくしから杯を出した。
 小さい杯である。
 どこの陶器か。火の坑《あな》から流れ出た熔巌《ようがん》の冷《さ》めたような色をしている。
 七人の娘は飲んでしまった。杯を漬《つ》けた迹《あと》のコンサントリックな圏《わ》が泉の面に消えた。
 凸面をなして、盛り上げたようになっている泉の面に消えた。
 第八の娘は、藍染の湯帷子の袖と袖との間をわけて、井桁の傍に進み寄った。
 七人の娘は、この時始てこの平和の破壊者のあるのを知った。
 そして
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