白い球を三つと、きたない骨牌を一組入れたまま、死骸は鉄道の堤の上から転げ落ちた。
 ツァウォツキイの死骸は墓地の石垣の傍に埋められた。その時グランの僧正が引導を渡したと云うのは訛伝《かでん》である。それに反して、女房ユリアが夜明かしをして自分で縫った黒の喪服を着て、墓の前に立ったと云うのは事実である。公園中に一しょに住んでいただけの人は皆集まっていて、ユリアを慰めた。その詞はざっとこんな物であった。「神の徳は大きい。お前さんをいじめた人の手からお前さんを救って下された。お前さんをいじめた人にも神は永遠なる安息をお与えなさるだろう。だがお前さんはまだ若い。こうなった方がかえってよかったかも知れない。あの男は神の恵みの下に眠るがよい。お前さんはとにかくまだ若いから」と云うような事であった。ユリアは頷いた。悲しげな女の目には近所の人達の詞に同意する表情が見えた。そしてこう云った。「難有うございます。皆さんが御親切になすって下すって難有うございます。」ユリアはまだその上にこう云った。「警部さん。あなたはこうなった方が、かえってよいかも知れないとおっしゃいましたが、そうかも知れませんわね。あの人
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