が忽然今一度かっと燃え立った。人を怨み世を怨む抑鬱不平の念が潮のように涌いて来た。
今娘が戸の握りを握って、永遠に別れて帰ろうとするツァウォツキイの鼻のさきで、戸を締め切ろうとした瞬間に、ツァウォツキイは右の拳を振り上げて、娘の白い、小さい手を打った。
娘はツァウォツキイの顔をじっと見た。そして再び戸の握りを握ってばったり戸を締めた。錠を卸すきしめきが聞えた。
ツァウォツキイはぼんやり戸の外に立っている。刹那に発した怒りは刹那に消え去って、ツァウォツキイはもう我子を打ったことをひどく恥ずかしく思っている。
ツァウォツキイは間の悪げにあたりを見廻した。そして小刀で刺した心の臓の痛み出すのを感じた。
それからツァウォツキイは急いで帰った。どっちへ向いて歩いているか、自分には分からない。しかし一度死んだものは、死に向って帰って行くより外無いのである。
初め旅立をした大きい家に帰り着いた頃は、日が暮れてから大ぶ時間が立っていた。
ここにはもう万事知れている。門番が詰所から挨拶をすると、ツァウォツキイは間が悪いので、頭を下げて通った。それから黙って二階の役人の前へ届けに出た。役人は
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