。あの権利がただ今でもありますでしょうか。」
「あるですとも。申立てをしなさるがよい。」役人は極《ごく》優しい声でこう云った。長く浄火の中にいたものには、詞遣《ことばつかい》を丁寧にすることになっているのである。
 ツァウォツキイは翌日申立をした。
 役人が紙切をくれた。それに「二十四時間賜暇」と書いてあった。
 それから押丁がツァツォツキイを穴倉へ連れて往って、胸の小刀を抜いてくれた。
 ツァウォツキイは早速出発して、遠い遠い道を歩いた。とうとうノイペスト製糸工場の前に出た。ツォウォツキイは工場で「こちらで働いていました後家のツァウォツキイと申すものは、ただ今どこに住まっていますでしょうか」と問うた。
 住まいは分かった。ツァウォツキイはまた歩き出した。
 ユリアは労働者の立てて貰う小家の一つに住んでいる。その日は日曜日の午前で天気が好かった。ユリアはやはり昔の色の蒼い、娘らしい顔附をしている。ただ少し年を取っただけである。ツァウォツキイが来た時、ユリアは平屋の窓の傍で縫物をしていた。窓の枠の上には赤い草花が二鉢置いてある。背後《うしろ》には小さい帷《とばり》が垂れてある。
 ツァウ
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