であるが如く、検閲官も亦新聞紙の良友である筈であります。わたくしは特にプラトン・アレクセエヰツチユに望んで置きます。君は必ずや事を解する検閲官となられて、世間から圧制家を以て目せられるやうなことの無いことを望んで置きます。」
「決してさやうな事はいたしません。閣下の御趣意通りにいたします。」慌てて、汗を流してゐるプラトンは、震ふ声でかう云ふと同時に突然両眼に涙を浮べた。これは長官の仰せの通りに、新聞紙の良友にならうと、熱心に思つて、何か分からないながら、称讃に価するやうな、或る衝動に、突然襲はれて、その劇烈な感情の発作の結果として、目に涙が湧いたのであつた。
 長官は演説の結末にかう云つた。「諸君。どうぞ相互に良友となつて、助け合つて、手を携へて、真理の光明に向つて進まれたいものです。どうぞ極端に奔《はし》られないやうにいたしたいものです。いかなる企業も、極端に奔れば有害になるのでありますが、就中印刷せられたる言論程、極端に奔つて危険を生ずるものはありますまい。」かう云つて置いて、一同に会釈をして、門へ出て、馬車に乗つて行つてしまつた。跡に残つた新聞紙の良友一同は、長官の進歩思想、人道
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