は、俯向《うつむ》いたままで長い螺釘《ねじくぎ》を調べるように見ていたが、中音《ちゅうおん》で云った。
「冬は中々《なかなか》好うございます。」
己はその顔を見詰めて、首を振った。そして分疏《いいわけ》のように、こう云った。「余計な事を聞くようだが、わたしは小説を書くものだからね。」
この時相手は初めて顔を上げた。「小説家でおいでなさるのですか。デネマルクの詩人は多くこの土地へ見えますよ。」
「小説なんと云うものを読むかね。」
エルリングは頭を振った。「冬になると、随分本を読みます。だが小説は読みません。若い時は読みました。そうですね。マリイ・グルッベなんぞは、今も折々出して見ますよ。ヤアコップセンは好きですからね。どうもこの頃の人の書くものは。」手で拒絶するような振をした。
己は自分の事を末流《ばつりゅう》だと諦《あきら》めてはいるが、それでも少し侮辱せられたような気がした。そこで会釈をして、その場を退《の》いた。
夕食の時、己がおばさんに、あのエルリングのような男を、冬の七ヶ月間、こんな寂しい家《うち》に置くのは、残酷ではないかと云って見た。
おばさんは意味ありげな微笑
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